散文小径

小説家です。時代小説を執筆しています。皆さまのご声援に支えられて描いております。よろしくお願いします。

シリーズ・里見家のおんなたち 9

 里見家に生を受けた女。
 里見家に嫁いだ女。
 円満な者も、不遇な者も、女たちの数だけ笑いもあれば涙もあったことでしょう。そんな里見家のおんなたちは、おおよそ、実名の残されていない者が多かったのです。院号または通り名で後世に伝えられる女性の逸話を、ひととき一緒に語りましょう。


 種姫。
 小田喜正木氏の盟主・正木大膳亮時茂の嫡男・大太郎信茂の正室。彼女は里見義堯の娘です。里見家の当主が家臣に娘を嫁がせることは、極めて高い信頼関係あったればこそと云えます。
 正木時茂はもともと義堯とともに犬掛で里見本家を凌駕した盟友。家臣というより、信の置ける共同経営者という立場です。これは、それぞれの先代の頃からの図式で、両者は幼少の頃から竹馬の友だったのかも知れません。
一国一城の主に長じた義堯をサポートする側になった時茂は、その頃の信頼関係を損なうことなく、両雄並び立たずを弁えてきました。その心根を知るからこそ、義堯も長狭方面の安定を図るとともに小田喜を攻略すると、そっくり時茂に経営を委ねたのです。
 里見と正木。
 安房と小田喜。
 両輪の如く阿吽のパートナー同士、次世代に期待を繋ぐのは当然といえるでしょう。里見家の後継者は小弓公方の娘・青岳尼を正室にしていたので、婚姻によるつながりは、自然と、時茂の子・信茂と義堯の娘・種姫との間で、ごく自然な形で収まったものと推察されます。

 正木時茂の死は、永禄4年(1561)4月6日。
 折しも越後の長尾景虎が小田原包囲を為して間もなくのことです。この包囲に、里見勢も加勢していることが、各種史料から伺えます。
 恐らく時茂最後の晴れ舞台こそ、この小田原陣だったに相違ありません。
 遠く越前の戦国大名・朝倉氏の重鎮・朝倉左衛門尉宗滴の著した史料『宗滴夜話』『宗滴話記』には、関東の優秀な武将のひとりとして、正木時茂が紹介されています。時茂は槍術に優れており、その恐るべき武勇から〈槍大膳〉と呼ばれていたこと等を知ることができます。その豪たる者の後継者として、正木大太郎信茂は期待を一身に負うのです。
 夫へよせる実家の厚い信頼。
 種姫にとっても、至福の時期だったかもしれません。

 永禄7年(1564)1月8日。
 第二次国府台合戦、この有無の一戦において、里見勢は北条勢に大敗するのです。この敗戦は里見氏にとって、取り返しのつかない状況へと転落するきっかけとなる出来事でした。そして、崩れる戦陣を支え、総大将である里見義弘を逃すため、正木信茂は壮絶な最期を遂げたのです。
 妻・種姫の失意は大きかったと思われます。
 小田喜正木氏を絶やさぬため、養子として憲時が跡を継ぎました。このことから、信茂種姫夫婦の子がなかったものと推察できます。
 
 夫の死後、種姫は22歳の未亡人。出家して尼となり、山奥の寺に隠棲して夫の菩提を弔う余生を送ったといわれます。隠棲した寺もいろいろ推測されそうです。安房国白浜に滝本山種林寺を建立し、そこに居していたとも伝えられますが、残念ながらこの一山は世に残されておりません。ただ、種姫を偲ぶ碑が、南房総市白浜町下沢地区に残されているそうです。
 夢酔、10月に白浜へご案内頂きましたが、この碑のこと、先に知っていればと、後悔しきり。熊野神社前面、市立白浜幼稚園裏手方面とのことです。今度、機会があったら行ってみたいですね。
 市原市朝生原には、種姫の菩提寺とされる宝林寺があります。晩年、白浜からここ宝林寺に移り住みました。

 江戸時代になって曲亭馬琴によって書かれた『南総里見八犬伝』。これに登場する「伏姫」は、この種姫をモデルにしたとのことです。

 余談ながら。
 正木信茂最期の地・国府台。この傍らに立つ和洋女子大学では、あるイベントが催されております。「里見祭」、まあ、いわゆる学祭でしょうか。たまたまネットサーフィンで発見したので、ご紹介に留めます。

「和洋女子大学」HP中キャンパスライフ記載
http://www.wayo.ac.jp/campus_life/festival.html

 平成の乙女たちも、種姫のことを存じ上げでしょうか?
 国府台古戦場に散ったひとつの恋物語だとしたら、ちょっと出来過ぎなところでしょうか。とまれ、里見の姫は戦国の世を、時にたくましく、時に儚く生きた足跡を残しております。



                  ◆  ◆  ◆



 戦国武将里見氏のNHK大河ドラマ放映を目指す「里見氏大河ドラマ実行委員会」が組織されています。里見氏終焉の地である鳥取県倉吉市、里見氏発祥の地の群馬県高崎市、そして館山市で、NHK側にドラマ化を働きかける運動を行っております。
「2014年に里見氏の物語をNHK大河ドラマで!」
 皆さまの温かいご声援をお願いします。

署名用紙はこちらに収納しております。
活動の趣旨に御賛同いただけましたら、是非、こちらの署名用紙をプリントアウトのうえ、支援の程よろしくお願いします!
宛先は、ポスターのとおりです。


これまで記載した、「シリーズ・里見家のおんなたち」です。

シリーズ・里見家のおんなたち1
シリーズ・里見家のおんなたち2
シリーズ・里見家のおんなたち3
シリーズ・里見家のおんなたち4
シリーズ・里見家のおんなたち5
シリーズ・里見家のおんなたち6
シリーズ・里見家のおんなたち7
シリーズ・里見家のおんなたち8







人気ブログランキングへ


にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
にほんブログ村



スポンサーサイト
  1. 2012/02/22(水) 20:00:36|
  2. 随筆・あっそう!里見発見伝
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<里見氏城跡(稲村城跡・岡本城跡)国史跡指定記念―シンポジウム「関東戦国史のなかの里見氏」と祝賀のつどい― | ホーム | 署名活動に愛とご理解を~!>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://musuitouzan.blog.fc2.com/tb.php/4-1f0c4869
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)