散文小径

小説家です。時代小説を執筆しています。皆さまのご声援に支えられて描いております。よろしくお願いします。

シリーズ・里見家のおんなたち 15

里見家に生を受けた女。
里見家に嫁いだ女。
円満な者も、不遇な者も、女たちの数だけ笑いもあれば涙もあったことでしょう。そんな里見家のおんなたちは、おおよそ、実名の残されていない者が多かったのです。院号または通り名で後世に伝えられる女性の逸話を、ひととき一緒に語りましょう。


 里見忠義の正室は、のちに〈東丸様〉と呼ばれる女性で、大久保忠常の娘です。忠常は徳川秀忠を支え続けた大久保忠隣の嫡男にあたりますから、里見家は徳川譜代に食い込む機会を得たことになります。

 大久保閥は当時、権勢を極めていたと云っても過言ではありません。
 まず、父・忠隣は徳川家の後継者論議にあたり、ただ一人の秀忠擁護者でした。『台徳院殿御實記』曰く、大久保忠隣・本多正信・井伊直政・本多忠勝・平岩親吉が家康に呼び出され、後継者を誰にするかと質された。本多正信は結城秀康を推し、井伊直政は松平忠吉を推し、本多忠勝・平岩親吉は二者択一に揺れた。このとき大久保忠隣だけは、秀忠を推した。
「戦乱の世においては、戦に勝つことが肝要ゆえ、武勇こそ第一にござるが、天下平定のなりし今となれば、文徳に優れておらねば、この平穏を保つ基礎を築けぬかと存じます。大殿の御子様方は、皆様、それぞれに優秀で、武勇・武芸においては短長を論ずることはできませぬ。これは武勇の短長で諮るべきではございませぬ。それがしが思うに、中納言(秀忠)様は、謙遜の御志深く、御孝心も厚きお方にござる。文徳・智勇にも長じておられ、また、これまで嫡子として遇せられて参られました。官位・人望も他の御兄弟に比して、いっそう超えておられます。さればこそ、大殿のお世継ぎたるべきお方は、中納言(秀忠)様をおいて他におられぬと存じまする」
と断じ、家康の意に適ったとされる。
 これが事実なら、二代将軍の前途を拓いてくれた大久保忠隣に対し、終生粗略に出来ない恩を秀忠は抱えることになる。その忠隣の嫡男として誕生した忠常は、人品骨柄とも優れた人物であり、将来を期待される存在だった。ゆえに正室は奥平信昌の娘・於仙を迎えている。於仙の生母は家康長女・亀姫。この婚姻により、徳川の縁戚関係となる。
 徳川の血が里見家当主と交わることで、否応なしにも家格を高め大久保閥にどっぷりと浸ることにつながるのです。東丸様はそういう使命を携えて、里見家に迎えられたのです。
 この大久保閥に組み込まれたことが、里見家にとって幸と不幸をもたらすのです。
 大久保忠常は里見忠義・東丸様が婚姻したその年に、急逝しました。死因は定かでありません。家康さえもその死を惜しんだ逸材、これを失ったことで、大久保一族は次第に衰退していくのです。
 大久保長安事件が起きるのは、慶長18年(1613)4月。
 これにより大久保忠隣は失脚、婚姻等による縁者や親しい者への波及が重なり、この当時、大勢の大名が改易・流罪・死罪となるのです。
 里見忠義が突如安房召上げを命じられたのは、慶長19年9月、明らかに大久保長安事件の連座です。倉吉転封を命じられた忠義に、東丸様は付いていきませんでした。実家に戻ったようですが、離縁の形跡はございません。
 東丸様は里見忠義が早世したのちも再婚することなく、亡き夫の菩提に務めたと伝えられます。この賢夫人が亡き夫のために遺したものは、月江山雲晴寺(兵庫県明石市人丸町)および高野山で見られます。特に高野山の五輪塔は33回忌によるもので、近くには、織田信長の墓所もございます。

 里見氏最後の当主に嫁いだ女性。
 再婚もせず、実家の扶養で生きてきたこの女性にとって、里見家とは、どんな意味があったのでしょうね。

 

                      ◆  ◆  ◆



戦国武将里見氏のNHK大河ドラマ放映を目指す「里見氏大河ドラマ実行委員会」が組織されています。里見氏終焉の地である鳥取県倉吉市、里見氏発祥の地の群馬県高崎市、そして館山市で、NHK側にドラマ化を働きかける運動を行っております。
「2014年に里見氏の物語をNHK大河ドラマで!」
 皆さまの温かいご声援をお願いします。




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  1. 2012/05/26(土) 16:45:25|
  2. 随筆・あっそう!里見発見伝
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里見家に生を受けた女。里見家に嫁いだ女。円満な者も、不遇な者も、女たちの数だけ笑いもあれば涙もあったことでしょう。そんな里見家のおんなたちは、おおよそ、実名の残されてい...
  1. 2012/05/26(土) 17:53:35 |
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