散文小径

小説家です。時代小説を執筆しています。皆さまのご声援に支えられて描いております。よろしくお願いします。

【連載余話】時には大胆な爆弾を

現在連載している「夏の波濤」。
房州日日新聞が我が家に届くのは、当日だったり翌日だったり三日後だったりと、郵便事情で揺らぎます。ひょっとしたら今日載ったかも知れないし、明日かも知れないけど、たぶん、読んだ方が目を疑う記述をしてみた。根拠はない。面白くしたいという好奇心だけの、ちょっとした爆弾だ。

「義康」
 この諱は、徳川家康から贈られたものである。


 たぶん、紙面でこれを読んだ方が、速攻で房日新聞の電話を鳴らしたかも。ひええ、御免なさい。
 先に書きましたが、根拠はありません。でも、「康」の一字はどこから来たのでしょうね。元服すると一字を賜る当時の仕来りは、実に奥が深いと思いませんか?
 徳川家康はこのとき北条氏政とつながっています。娘婿はその子・氏直。それでいて小牧長久手以降は秀吉に臣従するしたたかさを持っている。でも、心から心服している訳ではない。このとき北条は反秀吉路線、東北に至っては未だ係争。水面下で彼らに気脈を求めたい野心すら秘めている家康は、なりふり構わずに東国武士と誼を持とうとしたことでしょう。北条にとって水利を巡る嫌な相手・里見氏を味方にしたら、家康は氏政にも恩を売れる。
 そう。
 学者が絶対に否定したくなることを、平気で肯定させる屁理屈を見つけて、無理矢理に暴論展開してみたのです。
 なんのため?そう、ずぅっと先の伏線の為です。小説とは、そういう作戦も秘めているのです。でも、そのために読者から怒られたりすることもあります。今はとりあえず「はいはい」としか申しません。
 逆に、何一つ波風が立たなかったら、寂しいと思います。

 これまでの作中でも、いくつか爆弾を投下してきました。

 信長は、小姓に桐の箱を運ばせた。そして立ち上がると、それを手ずから岡本氏元に渡したのである。
「南蛮の宣教師から献上されたものじゃ。分けてやるから、蒔くがよい。ポルトガルの木の実じゃわ。実から油が採れるというぞ」
 岡本氏元は、これをホルトの木と理解した。


 このブログを読んだ人だけが、洗脳から褪めるかも。南房総市の宮本城趾にはホルトの木があります。このあと、信長から贈られたポルトガルの木の実は宮本城に植えられました。ここで、錯覚するのです。あの木は、信長が?わざわざポルトガルの木と書いてあり、ホルトの木と理解したと誇張しているにも関わらず。そう、現存と別の木だよと云っているのです。でも、今日これを読まなかった人は、最終回近くまでこのことを引き摺ることになります。そう仕組んだのですから。うふふ。
 
「小僧、里見の嫡男か?よい眼だ、気に入ったぞ。じきに儂が身内から嫁を使わしてやろう。三河守(徳川家康)、聞いたな?」
「これは思いがけぬ果報!」
 義頼は即座に平伏した。


 織田信長とのやりとりです。
 学術上、まったく系図の上では信憑性がみつけられませんが、里見義康の正室は信長の縁者とされています。養女か、姪か、落とし胤か。これが唐突に出てくるのは厳しいから、この段階で含みを持たせる。そのため信長との対面を演出したのです。
 史実がぁぁぁと云われると元も子もございませんが、小説は論文じゃありません。
 あらゆるエッセンスを散りばめて、あとの伏線に用い、ゆっくりと回収するのが作戦です。この時点で、もう家康は里見を無視できなくなっていくのです。秀吉よりも早く、家康は里見を見初めたことになるのですから。

 戸田一刀斎、本名・前原弥五郎。のちに伊藤一刀斎という名で知られる。この戸田一刀斎という呼称も、そもそもは師である鐘捲自斎通家の変名である。当時、彼はそれを名乗って武者修行の旅をしていた。

 今回の作品には、当時のあらゆるエッセンスを詰め込みたい想いがあります。そのひとつが、武芸者や剣術といったものです。ここに伊藤一刀斎が登場したのは、のちの小野次郎右衛門忠明との出会いを交えることで、今後の彼を登場させやすくしたためです。こののち小野忠明は、一己の武芸者として里見と同じ時代を生きていきます。剣客は剣客を呼び、膨らんでいきます。そうすることで、余り世に知られていない板鼻一万石の里見の一人を生き生きとさせることが出来る仕掛けとなります。
 これは、まだ餌のついていない仕掛けのようなもの。
「なんでこんなところに一刀斎がいるんだ」
というお叱りも、すべては計算尽くなのです。

 こういう小癪な物言いをしてはいますが、内心は常にびくびくです。
「よし、ちと嬲ってやろう」
という方もいることでしょう。蚤の心臓ですので、どうかお手柔らかに

でも、まだ爆弾はこれからも……。
「これも、小賢しい工作だな」
を見抜けるでしょうか。読者と夢酔の腹の探り合い。
「夏の波濤」は、そういう楽しみ方も出来る作品なのです。どうか、お楽しみ尽くしてください。


追伸
これ、読んだよ
  
seijyoP.jpg
という声を頂きました。
ホントに、ありがとうございます
最近、これがアマゾンにも出回っていたことを、作者自身が知りませんでした。中古サイン本らしいです。サイン入れたのは主に初版ですから、誰か読み厭きて売りに出しているんだろうな。手段はどうあれ、広く人の目に触れることは有難いことです。
でも、出来たら二版になるけど新品読んで欲しいな。
少しでも売れたら、天災続きの長野日赤へ僅かばかりのお手伝い(寄付金)をしたいと思っています。
東日本大震災のときは売上げの大半が寄付になったっけ。でも、この作品は、そういうものだろうと思っています。みんな、お手伝いしてくれたら、嬉しいです。
ご注文はこちらへ聖女の道標








追伸
雑誌「歴史人」のweb版でこんな企画しています。
歴史人公認ブログ隊募集中! http://www.rekishijin.jp/rekishijin-offcial-blog/  
ワシは連載と自分のblogで手一杯だ。
誰か、里見の伝道師となって世に布教してください。about_rekishijin.jpg









2014年、里見メモリアルイヤー。
ゆく年 くる年 豊穣の一年に 感謝  




戦国武将里見氏のNHK大河ドラマ放映を目指す「里見氏大河ドラマ実行委員会」が組織されています。里見氏終焉の地である鳥取県倉吉市、里見氏発祥の地の群馬県高崎市、そして館山市で、NHK側にドラマ化を働きかける運動を行っております。
「里見氏の物語をNHK大河ドラマで!」
 皆さまの温かいご声援をお願いします。

ポスター
 署名用紙はこちらに収納しております。
 活動の趣旨に御賛同いただけましたら、是非、こちらの署名用紙をプリントアウトのうえ、支援の程よろしくお願いします!


人気ブログランキングへ


にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
にほんブログ村
スポンサーサイト
  1. 2014/11/28(金) 22:11:46|
  2. 随筆・あっそう!里見発見伝
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<【連載余話】夏の波濤はこんな資料を参考にしております | ホーム | 【連載余話】難しい漢字と名前と>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://musuitouzan.blog.fc2.com/tb.php/159-4a3bce6f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)