散文小径

小説家です。時代小説を執筆しています。皆さまのご声援に支えられて描いております。よろしくお願いします。

倉吉紀行

ご静聴いただいております倉吉紀行。
いよいよ最終回です。



倉吉紀行その7

 いよいよ最後の行事です。「第29回倉吉せきがね里見まつり」、プログラムを頂戴して、準備に大忙しのスタッフや、演目に緊張する子供たちの表情を見つめる。プログラムをみると、兎にも角にも、子供たちが大活躍のお祭りと分かる。
 会場は倉吉市立山守小学校体育館だから、演じるも鑑賞するも、子供が多いのは頷ける。この山守小学校は、今朝、神事を行った山郷神社とは小鴨川を挟んだ真向かいの対岸に位置する。当然、目を凝らすと、山郷神社もよく見えるのだ。DSCF2542.jpg
 体育館の後方、仕切られた場所がある。野立ての場だ。茶道の心得は皆目ござらぬが、一服を相伴させていただく。DSC00028.jpg
そうこうしている間に、先ほど堀江能登守頼忠役で甲冑行列されていた石田耕太郎倉吉市長も平成人に武装解除され、こちらを訪れた。DSC_0449.jpg
     写真提供:田中直司事務局長
 この祭りは倉吉市の、というよりも、合併前の旧関金町による祭りだった。だから、旧関金町すなわちこの界隈のお祭りなのである。そこを弁え、あくまでお邪魔させて頂いている気持を忘れたら、この祭りの個性を見失ってしまう。その土地の、手作りな、風物詩なのである。

 脱線で恐縮だが、夢酔がむかしから楽しみにしていたのが、東京西部で年に一度の夏の風物詩だった「五日市映画祭」だ。公民館で手作り会場、椅子はパイプ椅子に座布団、朝から晩までその年のプログラムを5日間観るのだが、スタッフと観客に奇妙な連帯感が生まれた不思議なお祭りだった。過去形にしているのは、この五日市町も合併により、新たな自治体を冠する「あきる野映画祭」に生まれ変わったのだが、大きな会場に変わったことですっかり手作りの温もりが失われてしまったのである。開催ポリシーは不変であるが、箱物が変わっただけで、なんとも不思議なことである。
 【参考】あきる野映画祭HP
 この倉吉せきがね里見まつりは合併10周年の節目と聞く。
 10年間、大きな興業に昇華して華美にしない代わりに、当初理念を貫く。なんというパワーだろうかと、関心せざるを得ない。
「ここのお祭りは、一度観ると、癖になるんですよ」
 里見香華会長がそっと教えてくれた。
「こういう祭りは、忘れられなくなる」
 里見会の皆さまも口にする。毎年毎年、子供たちが積み上げて29年。卒業した子供のその子供も、その歴史に加わり、これからもきっと続いていく。積み上げる歴史、素晴らしいことではないか。
 それを、これから体感する。

 午後2時、オープニングセレモニーがはじまる。
 主賓来賓の紹介や挨拶が続く。祝電のなかには、内閣改造直後で忙中であろう石破茂地方創生・国家戦略特別区域担当国務大臣のものもあった。ああ、そうか、鳥取は石破さんの基盤でしたね。
 倉吉のゆるキャラ「くらすけくん」が登場して和んだあと、倉吉里見時代行列の甲冑隊が入場してきた。ああ、ここまで一体のイベントだったのですね。大変だ。参じる皆さんは、本当にご苦労様です。DSCF2539.jpg
 実は、八犬士に扮しないかと、あらかじめ福井氏に打診を貰っていたんです。楽しそうですよね。でも、取材できなくなっちゃうから……今回は見守る側に身を置きました。いつか機会がございましたら、今度は、是非。

 オープニングセレモニーが終わると、いよいよ開帳。
 演目を転記させて頂きます。

1. 関金保育園お遊戯
2. 打吹童子ばやし演奏
3. せきがねドラマリーディングの会による朗読劇
4. 喜々の会による「ちゃっきり節」
5. 八賢士太鼓愛好会による演奏
6. 関金子供歌舞伎保存会による子供歌舞伎

 体育館は老若男女が演じたり見守ったり、まさに、この地区の皆さんがお集まりされているのかという熱気を感じる。子供が演じるということは、その関係者が大勢見守ることに繋がる。大人や兄弟それに友達が、晴れ姿を温かく見守るのだ。演目が変わると、客層もまた変わる。声援を送る人も変わるし、体育館外で遊ぶ子供たちの影が入れ替わる。
 一応、座布団まで用意くださり、前席で観覧こそしているが、訳の分からぬ余所者の己は、まるで邪魔者だ。
 ああ、この町の住民が、みんなで一体となって参加しているのだと悟る。
 こういう祭りを都内で見出すのは難しい。人も町も飽和して、町内会にすら疎遠となる者もいて、地域不参加が目立つものの、それでも充分に生きていける。そんな都内の環境と比べれば、ここには当たり前のような一体感がある。前へ、前へ、同級生を見守ろうとやってくる子供たち。申し訳ない気持で、そっと体育館の外へ出てみる。
 周囲を見回す。
 決して高くはない山が、小鴨川に沿うように、両岸の壁となって連なっている。そう、まるで壁だ。登ることは造作もない高さであろうが、それでも隔離された世界という錯覚が否めない。ここに閉じ込められたのだと思ったとき、里見忠義はどういう考えを巡らせたことだろう。
 9月の空は、清んでいた。ゆっくりと、雲が流れていく。
 ほどほどの高さの山影は、空の圧迫感だけは感じさせることがなかった。せめてもの救いといえる。そのおかげで、広く広く、高い空が続く。
「あの山に登れば、彼方の安房が見えるものだろうか」
 そんな児戯に等しい気持を、里見忠義は抱いたのかも知れない。

 さて。
 最後のプログラムである関金子供歌舞伎保存会。夏休みの間、子供たちは一所懸命練習を重ねてきたのだという。そう、まさに夏休み返上の、伝統泥能だ。
 こういう形で、里見のことが地域特有の教育として、受け継がれているのである。伝統は、等しく道徳にも似ている。その道徳の中心に、里見がある。とても素晴らしいことだと思った。
 出演する子供たち。
 出演しない子供たちも固唾を呑んで見守る。
 ひとり一人、役に応じて見得を切る。それが決まる毎に、喝采の拍手。全体の一体感が溢れだしている。これだ、これを観てしまうと、確かに、癖になりそうだ。DSC_0525.jpg     写真提供:田中直司事務局長
 すべてを演じきった子供たちは、隈取の下の素顔ではきっと安堵の表情なのだろう。大役を終えた達成感は、何物にも代え難い。そんな子供たちに、里見香華会長から、全国里見一族交流会を代表して、感謝状のサプライズが贈られた。DSC_0443.jpgDSC_0535.jpg     写真提供:田中直司事務局長

 倉吉では、改易による敗残の将としての里見忠義像がない。
 憐憫と哀惜と同情に支えられた愛着が、しっかりと育まれていたのである。

 歌舞伎が終わり、祭りが終わると、夢酔の倉吉の旅ももうすぐ終わる。

 欲張ればキリがない。
 もっと見たい処があった。もっと知りたいことがあった。もっともっと……しかし、欲張れば、キリがないのだ。これだけの行程で、むしろ多くを得られたと、納得しなければいけないだろう。
 足りないくらいで丁度いい。
 もっと勉強すればいいのだ。
 いまは、これで足を知ればいいことなのだ。

 恐らく、この祭りを終えると、旧堀村の夏は終わり、季節は秋へと移ろうのだろう。





 夕暮れ。
 倉吉駅まで送って頂いた市職員に御礼を述べる。二日間、ご迷惑をおかけしました。これからも、素晴らしい倉吉市のために頑張ってください。来たとき同様、ホテルセントパレスを覗く。食事はモーニングだけというので、近くの提携洋食店まで、わざわざご案内頂いた。
 辺りは、もう夜の帷が下りていた。
 いよいよ、バスがくる。
 あっという間の倉吉の旅は、夢酔の心を豊潤なものに満たしてくれた。この旅にあたり、多大な御支援御協力を賜りました全ての皆さまに、心から感謝申し上げます。

 この日は、名月だそうですね。DSC00033.jpg 
バスに揺られながら、鳥取の月を車窓より愛でました。




 夜を徹して走り続けたバス。ありがとう。DSCF2571.jpg品川バスターミナルにて、お別れです。







 皆さまも倉吉に行ってみませんか?
 素晴らしい温泉が、皆さんを待っていますよ。DSC00014.jpg







 倉吉紀行。
 御静聴ありがとうございました。

 
 10月は、千葉県の行事が目白押しです。まだまだ間に合う里見のイベント、どうかその目で見届けください。





2014年、里見メモリアルイヤー。
盛り上がりの、ご開帳です。





戦国武将里見氏のNHK大河ドラマ放映を目指す「里見氏大河ドラマ実行委員会」が組織されています。里見氏終焉の地である鳥取県倉吉市、里見氏発祥の地の群馬県高崎市、そして館山市で、NHK側にドラマ化を働きかける運動を行っております。
「里見氏の物語をNHK大河ドラマで!」
 皆さまの温かいご声援をお願いします。

ポスター
 署名用紙はこちらに収納しております。
 活動の趣旨に御賛同いただけましたら、是非、こちらの署名用紙をプリントアウトのうえ、支援の程よろしくお願いします!


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  1. 2014/09/27(土) 09:43:46|
  2. 随筆・あっそう!里見発見伝
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